離婚を考えているものの、相手が応じてくれない。このような場合、どのような事情があれば離婚できるのでしょうか。
この記事では、静岡で離婚を検討している方に向けて、裁判で離婚が認められるための「法定離婚事由」と、別居や有責配偶者からの離婚請求について解説します。
協議や調停では、夫婦が合意すれば、法定離婚事由がなくても離婚できます。一方、相手が反対する中で判決による離婚を求める場合には、民法が定める法定離婚事由が必要です。
離婚の進め方|協議・調停・裁判の違い
協議離婚
夫婦で話し合い、合意によって離婚する方法です。離婚理由が法定離婚事由に該当する必要はありません。離婚の合意に加え、必要な事項を定めて離婚届を提出します。
調停離婚
夫婦だけでは話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所の離婚調停を利用できます。調停委員を交えて話し合い、離婚やその条件について合意を目指します。調停も話し合いによる手続なので、法定離婚事由がなければ離婚できないというものではありません。
裁判離婚
調停で解決できない場合には、離婚訴訟を提起し、判決による離婚を求めることを検討します。離婚訴訟の前には、原則として調停を経る必要があります。
判決で離婚が認められるには、法定離婚事由に該当する事情を主張し、証拠によって裏付けることが重要です。
2026年改正後の法定離婚事由は4つ
民法770条1項は、次の4つを法定離婚事由として定めています。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
2026年4月1日施行の改正民法により、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと」は、独立した法定離婚事由から削除されました。
精神疾患が関係する場合も、病名や回復の見込みだけで判断するのではなく、具体的な事情を踏まえ、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるかどうかが判断されます。
1.配偶者に不貞行為があった場合
不貞行為とは、一般に、自由な意思に基づいて配偶者以外の人と性的関係を持つことをいいます。いわゆる不倫が典型例です。
単に親しいメッセージを交換したり、2人で食事をしたりしただけで、直ちに不貞行為と認められるわけではありません。具体的な関係や行動、証拠の内容を確認する必要があります。
不貞行為を裏付ける証拠
性的関係を直接示す証拠がなくても、複数の事情から不貞行為が認められる場合があります。例えば、次の資料が問題になります。
- ラブホテルへの出入りを示す写真や記録
- 宿泊を伴う旅行に関する資料
- 性的関係をうかがわせるメッセージ
- 本人が不貞行為を認めた発言や書面
個々の資料だけで判断できるとは限らないため、前後の経緯を含めて検討します。
慰謝料を請求できる場合もある
不貞行為があった場合、配偶者や不貞相手に慰謝料を請求できることがあります。ただし、不貞相手の故意・過失や、不貞行為が始まった時点で婚姻関係が既に破綻していたかなどによって、結論は異なります。
また、双方に請求できる場合でも、同じ損害について二重に賠償を受けられるわけではありません。不貞行為自体による慰謝料と、離婚に伴う慰謝料も区別して検討する必要があります。
2.配偶者から悪意で遺棄された場合
「悪意の遺棄」とは、正当な理由なく、夫婦の同居・協力・扶助の義務に違反することをいいます。
例えば、収入や資産があるのに必要な生活費を渡さない、正当な理由なく家を出て配偶者を放置するといった行為が、該当することがあります。
別居しているという事実だけで、悪意の遺棄になるわけではありません。仕事の都合による単身赴任や、DVから避難するための別居など、正当な理由がある場合は区別されます。
単身赴任自体に問題がなくても、その間の生活費の負担状況などによっては、扶助義務への違反が問題になることがあります。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでない場合
配偶者が生きているか亡くなっているか分からない状態が3年以上続いている場合は、法定離婚事由に該当します。
必要なのは「生死が不明」であることです。生存は確認できるものの、住所が分からない、連絡が取れないという場合は、この事由には該当しません。ただし、別の法定離婚事由に該当する可能性はあります。
失踪宣告との違い
生死が7年間明らかでない場合には、普通失踪による失踪宣告も選択肢になります。失踪宣告は、法律上、一定の時点で死亡したものとみなす制度です。船舶の沈没など、死亡の原因となる危難に遭遇した場合には、別の期間の定めがあります。
離婚は婚姻関係を解消する制度ですが、失踪宣告は相続などにも影響します。目的や財産関係を踏まえて、どの手続を利用するか検討する必要があります。
4.婚姻を継続し難い重大な事由がある場合
夫婦関係が破綻し、婚姻生活の回復を期待できない場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められることがあります。
裁判所は、夫婦関係の経緯、別居の状況、言動、生活費の負担など、さまざまな事情を総合して判断します。
長期間の別居
長期間の別居は、婚姻関係の破綻を判断する重要な事情の一つです。
ただし、「別居が5年になれば離婚できる」といった一律の基準はありません。同居期間、別居の理由や経緯、関係修復の可能性、子どもの状況、婚姻破綻についての責任などを踏まえて判断されます。
DV・金銭トラブル・性格の不一致など
次のような事情も、程度や継続性、夫婦生活への影響によっては、婚姻を継続し難い重大な事由として考慮されます。
- 身体的暴力や精神的虐待などのDV
- 浪費や借金による深刻な生活上の支障
- 深刻な対立を伴い、関係修復が困難になった性格の不一致
例えば、「性格が合わない」という主張だけで、当然に裁判離婚が認められるわけではありません。どのような対立があり、夫婦関係がどの程度損なわれているかを、具体的に示すことが重要です。
有責配偶者からの離婚請求は認められるのか
不貞行為などによって婚姻関係を破綻させたことについて主な責任を負う配偶者を、「有責配偶者」といいます。有責配偶者からの離婚請求は、信義誠実の原則との関係で厳しく判断されます。
最高裁昭和62年9月2日判決は、別居が年齢や同居期間との対比で相当の長期間に及び、未成熟の子がいない場合には、離婚によって相手方が極めて苛酷な状態に置かれるなどの特段の事情がない限り、有責配偶者からの請求という理由だけで離婚を認めないことはできないとしました。
その後、最高裁平成6年2月8日判決では、未成熟の子がいる事案でも、具体的な事情を踏まえて離婚請求が認められています。
実務では、主に次の事情を確認します。
- 双方の年齢や同居期間との対比で、別居がどの程度の長さに及んでいるか
- 未成熟の子の有無と、その監護・教育・生活の状況
- 離婚によって相手方が受ける精神的・社会的・経済的な影響
- 生活費の支払いや、離婚後の経済的な給付などの状況
「別居10年以上」「子どもが高校生以上」といった固定的な基準で判断されるものではありません。未成熟の子に当たるかどうかも、年齢だけではなく、経済的・社会的な自立の状況などを踏まえて検討します。
静岡で離婚について弁護士への相談を検討している方へ
離婚が認められるかどうかは、理由の名称だけでなく、これまでの夫婦関係や証拠の内容によって異なります。
相談の際には、結婚から現在までの経緯、別居を始めた時期と理由、生活費の負担状況、相手とのやり取りなどを時系列で整理しておくと、検討を進めやすくなります。
静岡で離婚を検討している方は、法定離婚事由に当たるかという点に加え、話し合いでの解決の可能性や、必要な証拠、手続の進め方についても弁護士にご相談ください。
この記事は、2026年4月1日施行の改正民法を踏まえた一般的な情報提供を目的としています。個別の事案については、具体的な事情により判断が異なります。