養育費の目安は、父母の収入と子どもの人数・年齢をもとに、裁判所が公表する「養育費算定表」で確認できます。ただし、表の金額がそのまま全家庭に当てはまるわけではありません。2026年4月に始まった法定養育費の月2万円は、通常の養育費の相場や上限ではないため、区別して考えましょう。
この記事で分かること
- 養育費算定表の選び方と収入の確認方法
- 具体例による養育費の目安
- 通常の養育費と、法定養育費・優先回収の上限額の違い
- 養育費を取り決める方法と、支払期間の考え方
養育費とは
養育費とは、経済的に自立していない子どもの生活・教育・医療などに必要な費用です。
父母は、離婚後もそれぞれの経済力に応じて子どもの生活を支えます。受け取る親への慰謝料ではなく、子どもの暮らしのためのお金です。離婚前の別居中は、配偶者と子どもの生活費を含む「婚姻費用」として検討します。
算定表を使える場合と、個別の検討が必要な場合
算定表は、主として一方の親と暮らす子どもについて、もう一方の親が負担する標準的な月額を確認する資料です。法律で一律に定められた料金表ではありません。
私立学校の学費や高額な医療費がある場合、父母が子どもを分けて育てている場合、収入が表の範囲を超える場合などは、個別に検討する必要があります。通常の支出は算定表の幅の中で考慮されているため、支出があるだけで当然に上乗せされるわけではありません。
養育費算定表の見方と、取決めまでの手順
-
子どもの人数・年齢に合う表を選ぶ
裁判所の令和元年版算定表は、子ども1〜3人の人数と、「0〜14歳」「15歳以上」の年齢区分に応じて分かれています。子どもが2人なら、原則として2人用の表を使います。1人用の金額を単純に2倍にはしません。
-
父母それぞれの年収を確認する
給与所得者は、源泉徴収票の「支払金額」を確認します。税金や社会保険料を引いた手取り額ではありません。賞与や副収入がある場合も確認しましょう。
自営業者は、売上をそのまま使うのではありません。確定申告書の「課税される所得金額」を出発点に、基礎控除や青色申告特別控除など、実際の支出を伴わない控除等を加える調整が必要です。児童手当・児童扶養手当は、受け取る親の年収には含めません。
-
縦軸と横軸の交点を見る
縦軸は支払う側、横軸は受け取る側の年収です。それぞれ「給与」と「自営」のどちらの目盛りを使うか確認します。2本の線が交わる帯に書かれた金額が、標準的な月額の目安です。
子どもが複数いる表の金額は、原則として子ども全員分の合計です。各人の金額も明確にしたい場合は、年齢等を踏まえて分けて記載します。
-
特別な事情と支払条件を話し合う
月額だけでなく、支払開始月、毎月の支払日、終了時期、振込先、進学や医療の臨時費用を確認します。入学費用などは、どの費用を対象にし、どのように負担するかを具体化しましょう。
-
合意を文書にし、まとまらなければ調停を利用する
調停とは、家庭裁判所で調停委員などを交えて話し合う手続です。離婚前なら離婚調停、離婚後なら養育費請求調停などを検討します。養育費請求調停が不成立となった場合は、裁判官が判断する審判へ移ります。
養育費の金額の目安
裁判所の説明資料にある算定例
次の条件では、養育費は子ども2人の合計で月10〜12万円程度が目安とされています。各家庭の平均額ではなく、特定の条件での使用例です。
| 項目 | 算定例の条件 |
|---|---|
| 支払う側の給与年収 | 715万2,000円 |
| 受け取る側の給与年収 | 202万8,000円 |
| 子ども | 7歳と10歳の2人 |
| 算定表による目安 | 2人の合計で月10〜12万円程度 |
収入資料が古い場合や、退職・休業などで収入が変わっている場合は、現在の状況も確認します。
法定養育費の月2万円は相場・上限ではありません
2026年4月1日以後に離婚し、離婚時に養育費の取決めがない場合などには、離婚時から引き続き子どもを主として世話する親が、子ども1人につき月2万円の法定養育費を請求できる制度があります。
これは取決めまでの暫定的・補充的な制度です。通常の養育費の相場や上限を月2万円とするものではありません。具体的な養育費は、父母の収入や子どもの人数・年齢等を踏まえて、協議・調停・審判などで定めます。
先取特権の月8万円も、養育費の上限ではありません
先取特権とは、他の一般の債権者より優先して支払いを受ける権利です。養育費の取決めを証明する一定の文書があれば、強制的な回収の根拠となる「債務名義」がなくても、差押えを申し立てられる場合があります。債務名義には、判決や、公証人が作成する一定の公正証書などがあります。
文書には金額と支払期日を具体的に記載する必要があります。口約束や曖昧な合意ではこの方法を使えず、合意書だけで差押えが保証されるわけでもありません。
月8万円は子ども1人当たりの優先回収の範囲の上限であり、養育費の上限ではありません。取決めが2026年3月31日以前でも、同年4月1日以後に発生する養育費には先取特権が付与されます。
養育費はいつまで支払うのか
通常の養育費は、18歳になっただけで当然に終了するとは限りません。就学状況や経済的な自立の程度などを踏まえ、終了時期を具体的に取り決めます。
一方、法定養育費は、取決めがされることや子どもが18歳に達することなどによって終了します。通常の養育費と終わり方を混同しないことが大切です。
未払い分には、一定期間が過ぎると相手の主張により請求が認められなくなる「時効」の問題もあります。支払日や合意・裁判所の手続の内容によって検討が必要なため、入金記録と文書を保管しましょう。
よくある質問
Q. 共同親権なら養育費は不要ですか?
A. 不要になるわけではありません。親権は子どもの養育や財産管理などに関する権利と義務です。2026年4月から離婚後も父母双方が持つ共同親権を選べますが、共同親権・単独親権のどちらが原則ということはありません。養育費は、実際の養育状況と父母の経済力等を踏まえて考えます。
虐待のおそれや、配偶者からの暴力であるDVその他の事情により共同で親権を行うことが困難な場合などには、家庭裁判所は単独親権としなければなりません。離婚済みの場合の共同親権への変更には、家庭裁判所の親権者変更の調停または審判が必要で、父母の合意だけでは変更できません。
Q. 相手が収入資料を出さない場合はどうしますか?
A. 分かる資料で整理し、家庭裁判所の手続を検討します。改正法では、養育費に関する裁判手続で収入情報の開示を命じる制度も設けられました。利用の可否は個別に確認します。
Q. 一度決めた金額は変更できますか?
A. 収入や子どもの進学などの事情が変わった場合は、増額・減額を協議し、まとまらなければ調停・審判を求める方法があります。自己判断で支払いを止める前に確認してください。
まとめ
養育費は、正しい収入資料と算定表で目安を確認しましょう。
月2万円と月8万円は、それぞれ異なる制度上の金額です。
月額だけでなく支払日・終了時期も具体的に取り決めることが大切です。
静岡で養育費にお悩みの方は、離婚前の段階から弁護士への相談をご検討ください。
関連記事
個別のご相談については、養育費の相談・サポートをご確認ください。ご相談を希望される方は、お問い合わせフォームからご連絡いただけます。